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赤い月(銀魂 阿伏兎)

第1章 プロローグ


次の日から、お嬢ちゃんの特訓が始まった。
が、まあ、うん。読みどおり体力ないし、戦闘経験皆無だったね。

「なんだって、こんな一般人捕まえてきたの?」

とりあえず、彼女には腕立てとか腹筋とか、基礎トレーニングをさせながら、集会室で漫画読んでる神威に声をかけた。

「え?彼女跳躍力とか瞬発力半端なかったでしょ?あと、戦闘の勘っていうのかな…」

「まあ、人間離れした部分も、ときどき発揮したりするけど…」

神威の言うとおり、確かにそう言う部分もあることはある。だけど、正直、そこまでのものか?
夜兎族を指揮する団長自らが育てるほどのものなのか?

俺にはいまいち納得することができなかった。

「阿伏兎、変なところ彼女に肩入れしてるよね。…俺が修行つけようか?」

肩入れしてる?

俺のほうが?

俺にはその言葉を理解できなかった。

その間にも神威は無言で漫画を読みながらポテトチップスを食べている。

「…悪かった、アンタの目を信用してないわけじゃない。肩入れについてよくわからない。
修行は俺に任せて欲しい。アンタ、手加減って物知らねえからすぐ殺しちゃいそうだし」

「…どうだろうね。まあガンバッテネ~」

こちらに一瞥もくれることなくそう言って、また無言で漫画を読み始めた。

肩入れ…そうか。

こいつは那美への興味は俺よりはるかにないんだ。

よく考えれば、こいつにとって、これもちょっとした遊びの一つ。最終的には殺すために育てているんだ。それが遅いか早いかだけで。

その点では、俺よりもずっと那美のほうが自分の立場をわきまえている。強い生への執着は、裏を返せばどこか死を覚悟しているということだ。

俺は目的も忘れて彼女を強く育てなければと思っていた。いや、今も思っている。


再び那美の部屋に戻ってきた。

彼女は言われたとおり筋トレをしている。

俺が戻ってくるなり、「死ぬ死ぬ!!!腕痛いwww」と騒ぎ出した。



いつか殺すために育てるなんて、やっぱり俺には出来ない。

肩入れでもなんでもしてやるよ。できないことをする努力なんてバカらしい。

俺ぐらいは本気でこいつを生かすために動いてやろうと思った。
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