第1章 プロローグ
「こいつは強くなる」
「…」
どこかで聞いたことのある台詞だった。
神威は自信たっぷり、という感じで、猫真似お嬢ちゃんの頭を掴んで俺のほうに向けた。
「はぁ。本気ですか?」
戦ったこともなさそうなこんなか細いお嬢ちゃんに何があるのか?何を感じたのか?
「…今回はキャッチアンドリリースってヤツだよ、阿伏兎」
「なんですかソレ。新しいギャグですか?ぜんっぜん面白くないッスよ」
「ん?ギャグじゃないよ。俺はいつもホ・ン・キ☆」
マジKOEEEE!!!やっぱこいつクレイジーだわ。
「あっは・はぁ。うん。前言撤回。
そんなことを本気でやってしまう貴方様は抱腹絶倒もんだ、ちくしょぅ」
そう言って自分の傘を肩に担いだ。
ヒラリとマントが舞い、義手も付けずにそのままにしていた左腕を見て、お嬢ちゃんが息を呑んだのが分かった。
「片腕がない?片足がない?…そう驚くことじゃない。あんたがこれから踏み入れる世界はそんな世界さ。
夜兎じゃないお嬢ちゃんにはちょっと激しい世界だよ~。団長に殺されてたほうのがよかったのかもしれないね」
そんな俺の台詞に、始終怯えていたお嬢ちゃんが、不意に強い語気で俺に言った。
「いいえ。私はまだ死ねないのです。だから、これが一番いい選択だったと胸を張って言えます」
強い決意を感じる目を見て、俺は、いい女だなと思った。
なんだって、この人は…そういう人を当ててきちゃうんだろうね。
俺は彼女の頭をポンと叩いて、
「団長、あんたはほんとに見る目があると思う。
…でも、今回のあんたの人選は間違いだと思う」
そう言って、そのまま二人に背を向けて自分の部屋へと向かった。
ATOGAKI
…ということで阿伏兎版スタートしました。
『赤い月』神威(ヒロイン目線)版書き始めた当時の知識と妄想のみで書いているので、神威と阿伏兎の関係、春雨の構造なども多々オリジナル入ってますが、どうぞお付き合いください。
こちらの二人は、神威が春雨に入ってしばらくしてから出会った関係で、原作よりも付き合いが短く関係も深くありません。
そのため、そこそこ阿伏兎、神威をdisってますw
disってすみません。