第1章 プロローグ
鳳仙を倒した我々、第七師団はそこそこ出世し、今日は春雨本部で任命式が行われた。
しかし、例のごとくうちの団長はそういうのが嫌い(ていうか面倒くさい)なお人のため、副団長の俺が仕方なく参加した。
「ったくよぉ。あの人どこいってんだぁ…」
任命式が終わって春雨支部に戻っても、姿を現さない(出社しない)団長様に、俺は少しイライラしていた。
そんな中、春雨の長距離小型宇宙船が春雨第七支部に到着した。
放送が入り、俺はそのままプラットホームを目指した。
いつも静まり返ったプラットホームが、にわかに騒がしくなった。
団員たちが集まり、神威コール。
こいつらの心酔っぷりはほんとすげえよな。夜兎は基本群れない習性なので、ここでこうして徒党を組んでること自体奇跡なのに、この心酔っぷり。
なんかこういうノリ、引くわぁ~…
と、思って遠巻きに宇宙船をうかがっていると、例の団長様が爽やかに現れ、「やぁ!」とか言って、でかい白い袋を担ぎながら姿を現した。
あ、なんか☆やっぱり☆むかつく☆ZE☆☆
歩く軌道に立っていたつもりだったが、神威は変な方向に歩いて、プラットホームの奥へと消えた。
「…なんだ?」
なんか激しく嫌な予感がするんだけど。
俺はその姿を追いかけると、廊下の先で白い袋を担いで歩いている。
「……」
とりあえず追いかけ、声をかけた。
「おやァ、団長。今日も遅いお帰りで」
「やぁ、阿伏兎。やだなぁ。これでも急いで帰ってきたんだよ。見せたい物があって」
相変わらず張り付いたような笑顔を浮かべている。
明らかにそれだよな、と巨大な白い袋…なんだかムクムク動いているそれを見つめる。
「惑星R殲滅戦の途中で、黒猫を拾ったんだ」
「黒猫…ねえ…」
この若さにして、こいつのこの腹の底の見えなさは本当に末恐ろしいと思う。
「そりゃまた…ずいぶん…活きのいい黒猫さんだ…」
地球に行ってからさらにこいつの腹の底が見えなくなった。
袋のサイズから言って、明らかに人間が入ってる。
なんで生け捕りにした?
こいつは他人にこれっぽっちも興味なんてないはずなのに。