第7章 バングル…
仄かに木の香りのする脱衣所で服を脱ぎ、浴室への扉を開けると、そこに広がっていたのは、まるで温泉旅館と見紛うばかりの光景で…
「すげぇな…」
溜息交じりの兄ちゃんの隣で、俺はただただ首を上下に振るしか出来なくて…
「入ろうぜ」
兄ちゃんに腕を引かれて浴室に一歩足を踏み入れると、多分桧だろうか…、足の裏に感じる木の感触が気持ちいい。
「前にさ、話には聞いてたんだよな、この辺は源泉かけ流しだから、ってさ…。でもまさかこれ程とはね…」
俺の腕を引いたまま、兄ちゃんが湯船に片足を突っ込む。
でも、
「待って? ちゃんと洗ってからじゃないと…」
いくら源泉かけ流しとは言ったって、他人様の家の風呂にかけ湯もなしに入るなんて…
「そっか、そうだよな…。んじゃ、お前そこ座れや。背中流してやるよ」
「うん」
丁度シャワーの下に置かれた小さな木の椅子に腰を下ろすと、兄ちゃんが手桶にお湯を掬って、それを俺の背中に流しかけた。
「熱くないか?」
「うん、丁度いいよ」
タオルなんてないから、兄ちゃんが手のひらでボディーソープを泡立ててから、俺の背中を撫でた。
背骨に沿うように、肩甲骨をなぞるように…
丁寧に丁寧に、俺の身体に柔らかな泡を纏わせた。