第7章 バングル…
でも…
兄ちゃんは“一緒に作りたい”って言ったけど…
今一その言葉の意味が理解出来ない。
そんな俺の気持ちを感じ取ったのか、兄ちゃんがクッと鼻を鳴らして笑って、俺の胸で揺れる指輪を手に取った。
「お前さ、ずっと着けてくれてるでしょ? 俺、こんな性格だからさ、あんま言ったこともないけどさ、超嬉しくてさ…」
知ってるよ…
俺、ちゃんと知ってる。
兄ちゃんがこの指輪を見る度に、嬉しそうに目を細めてること、俺は知ってるよ。
「離れてる時間もさ、一緒にいる…つうかさ…」
そうだ…、俺もそれは感じていた。
いつだって兄ちゃんが俺の隣にいる、って…
「だからさ、もっと増やしたいな、と思ってさ…。そしたらさ、もっとお前が近くなんじゃねぇか、ってさ…」
やっぱり兄ちゃんが何を言いたいのか、俺には分からない。
でも、不器用な言葉でも、俺に一生懸命に想いを伝えようとしてくれてるのが嬉しくて…
「うん…。増やそ? いっぱいいっぱい増やそ?」
離れていた時間が少しでも埋まるように…
気付けば俺は兄ちゃんの胸に顔を埋めていて…
いや、自分から飛び込んだんだけどさ…
「あの~、お取込み中申し訳ないんだけどさ、早くしてくんないかな? じゃないと、智の奴、今にも沈没しちまいそうなんだけど」
翔さんの、半ば呆れたような声に顔を上げると、パイプ椅子に座ったままの姿勢で、智さんが舟をこぎ始めていて…
「すんません…」
俺たちは顔を見合わせて笑った。