第7章 バングル…
「見せてみ?」
言われて、俺は唇の隙間から舌先を少しだけ突き出す。
「あーあ、しっかり火傷してんじゃん…。お前猫舌なんだから、ちゃんと気を付けないと…」
「…うん。あ、ほころれ、今日ここに来らいゆうは?」
ああ、もぉ…
舌がヒリヒリして上手く喋れねぇ…
「ん? ああ、そうだったな。実はさ、お前と一緒に作りたくてさ…」
兄ちゃんが照れ臭そうに頭を掻いて、俺から視線を逸らす。
「るくる…っれ、らりを…?」
上手く舌の回らない俺を、智さんと翔さんがクスクス笑って見ている。
ああ、もぉ…、今日はなんて日だ!
「実はさ、去年その指輪をお前にプレゼントした時から考えてた事なんだけどさ、俺らずっと離れて生きてきたじゃん?」
親の事情とはいえ、俺達兄弟は、去年再会するまで、それこそ生き別れ同然に生きてきた。
それも、俺が母さんの愛情を一心に受けていた頃、兄ちゃんは施設で…
きっと寂しい思いも沢山して来た筈だ。
「んでさ、“時間を埋める“なんてことは、どんだけ俺らが愛し合おうと、どんだけ同じ時間積み重ねようと、やっぱ無理なんだよ」
いつになく真剣な表情の兄ちゃんが、一瞬…だけど瞼を伏せた。
そりゃそうだよね?
30年だもん…
俺だって痛い程感じていた。
どれだけ歳月を重ねても、簡単には埋まらないって…