第7章 バングル…
立ち話もなんだから、と翔さんがパイプ椅子を用意してくれたから、俺はジャケットを脱いでそこに腰を下ろした。
「で、あの…、ここ…は?」
室内をグルッと見回すと、綺麗に整頓された工具やら、オーブンのような窯のような、ちょっとした設備もある。
それにデザイン画らしき物が、壁の至る所に貼られていて…
ふと、その中の一枚に俺の目が止まる。
「あ…、これ…」
確か…
俺はネクタイを緩め、ボタンをいくつか外すと、首に下げチェーンを引っ張り出した。
やっぱりそうだ…
去年の誕生日に、兄ちゃんがプレゼントしてくれたシルバーのリングと同じデザインだ。
「兄ちゃん、もしかして…?」
「そう、それ作ったの僕」
俺の前にパイプ椅子を置き、跨るように座った智さんが、自慢げに鼻を鳴らした。
「ふふ、気に入ってくれてるみたいで嬉しいよ」
「そ、そりゃもう…!」
だって兄ちゃんから初めて貰ったプレゼントだもん。
気に入らないなんてありえない。
現に、普段は指に嵌めることは出来ないけど、ずっと肌身離さず着けてるし…
「良かったぁ。あ、でね、今日来て貰ったのはね…」
「智! 俺が言うから…」
言いかけた智さんを遮って、兄ちゃんが一つ咳払いをした。
そして俺の手を掴むと、甲に唇を落とした。
「ちょ…、兄ちゃん?」
普段はそんなキザなこと絶対にしないのに…
それに何より人前でなんて…
今日の兄ちゃん、いつもと違う?