第1章 兄弟…
潤side
「お前のせいだぞ、邪魔すんなよな、ったく…」
俺の顔を手で押し退けると、兄ちゃんはゲーム機をポンとソファに放り投げた。
そして不機嫌な顔で缶ビールを一気に煽った。
「兄ちゃん、それ俺の飲みかけ…」
まだ開けたばっかで、一口しか飲んでないのに…
乱暴に置かれたテーブルの上の缶は、空っぽだ。
「あ、そうだった? 悪い、冷蔵庫にまだあんだろ?」
そう言って兄ちゃんは床にゴロンと寝転がった。
「兄ちゃん? 俺の好きな人がどんな人か、気になる?」
俺は兄ちゃんを真上から見下ろした。
「教えたげよっか?」
「そ、そんなの俺が聞いてどうなんだよ? だし、別に興味ないから…」
興味ない、なんて言ってるけど、その顔は真っ赤で…
頬に触れようとしたら、サッと視線逸らしちゃうしさ…
分かり易いんだよね、兄ちゃんは。
兄ちゃんだって、本当は俺のこと好きなくせにさ。
俺見ちゃったんだよね、兄ちゃんが俺の名前呼びながら1人でシテるのさ…
だから俺と同じ気持ちなんだ、って思ったら嬉しくってさ。
「俺が好きなのはね…?」
「だ〜から、聞きたくないって!」
兄ちゃんは両手で耳を塞いだ。
俺はその手に自分の手を重ねて、グッと顔を寄せた。
鼻先が触れるか触れないかの距離に、兄ちゃんのビックリ顔がある。
「俺が好きなのは、兄ちゃんだから…」
俺は更に兄ちゃんとの距離を縮めて、驚いて半開きになった唇に、自分のそれを押し付けた。