第4章 同居…
「ご馳走様でした」
個室を出た俺達は、カウンターの向こうで洗い物をしていた雅紀先輩に向かって頭を下げた。
「なんだ、もう少しゆっくりしてけばいいのに」
雅紀先輩が心底残念そうに笑って、洗い物の手を止めた。
俺も出来ればそうしたいところだけど、でも…
「また再来月来ますよ。今度は潤の誕生日なんで」
俺の代わりに和が答える。
そして俺の腰に手を回して引き寄せた。
「な、潤?」
「う、うん。そうだね…」
もう…、さっきまでの人見知りはどこ行ったんだよ…
まるで別人のような和が、俺を見上げてニヤリと笑う。
「そっかそっか。あ、そうだ、ちょっと待ってて?」
そう言うと雅紀先輩が奥の厨房へと入って行った。
そして戻って来た先輩の手には、小さな箱が抱えられていて…
「これさ、俺からのささやかなプレゼント」
そう言ってその箱を俺達に向かって差し出した。
「ケーキなんだけどさ、良かったら二人で食べてよ」
「マジで? うわぁ、雅紀先輩の造るケーキ超美味いんだよな」
「へえー、そうなの?」
俺の隣で和が少しだけ驚いたように声を上げて、箱を少しだけ開けて、中を覗き込んで、満足そうに顔を綻ばせた。
「家帰って、二人で早速頂きますよ」
和が俺の手をそっと握った。