第4章 同居…
「いらっしゃい」
少し重たいドアを開けると、明るい笑顔が俺達を迎えてくれた。
「お久しぶりです。すいません、急に…」
俺が頭を下げると、先輩は気にすんなとばかりにウィンクを一つ寄越し、俺の背中に隠れるように立った兄ちゃんに頭を下げた。
「お兄さんもお久しぶりですね」
「あぁ…、どうも…」
満面の笑みを向けられ、照れた様子で頭を掻く兄ちゃん。
初対面でもないのに、ほんと人見知り激しいんだから…
「一番奥の部屋、用意してあるから」
「ありがとうございます、雅紀先輩」
「可愛い後輩の頼みじゃ、断れないだろ?」
屈託のない笑顔で笑い、さっさと行けとばかりに顎をしゃくる。
俺はそっと兄ちゃんの手を握ると、そのまま手を繋いで店の奥へと足を進めた。
突き当りのドアを開けると、全体的なシックなインテリアで設えられた部屋の中央に、紫色のクロスをかけたテーブル。
その上に飾られた、黄色一色で造られたテーブルフラワー。
まるでそこだけが温度が違うような…、そんな気さえする。
「すげぇ…、こんな部屋あったんだな…」
「うん。普段は使わないんだけど、特別な時だけ開けてくれるんだ」
「へぇ…、そうなんだ…」
俺は兄ちゃんの繋いだままだった手を離すと、椅子を引いた。
「兄ちゃ…、和、座って?」
二人だけの特別な呼び方で名前を呼ぶと、和が恥ずかしそうに瞼を伏せた。