第4章 同居…
「どうする? 飯、食って帰るか?」
車を少し走らせた所で、兄ちゃんが助手席のシートを倒した。
「うん、そうだね。たまにはいいんじゃない? それに今日は兄ちゃんの誕生日だし」
一年に一度の特別な日だから、特別な時間を過ごす。
それって、簡単事のようで、実は案外難しかったりするんだよね…
「兄ちゃんは何食べたい?」
聞かなくても大体分かってるけどね、兄ちゃんの食べたい物なんてさ…
「ん~? そうだなぁ…やっぱり…」
『ハンバーグ!』
期せずして揃った声に、俺達は顔を見合わせて笑った。
「何だよ、何でお前が答えてんだよ」
そりゃだって、分かるよ兄ちゃんの考えてることぐらい。
「だって兄ちゃん、ハンバーグ超好きじゃん?」
「そりゃそうだけどさ…」
「じゃあ決まりね? ハンバーグ食べに行こっか」
ハンドルを切ると、前に一緒に行って兄ちゃんが美味しいと言っていた店に向かって車を走らせた。
あ、そうだ…
俺はすぐ先に見えたコンビニの駐車場に車を突っ込むと、兄ちゃんに”ちょっと待ってて”とだけ言って車を降りた。
ポケットからスマホを取り出し、電話を掛ける。
電話の相手はレストランのオーナー。
その店のオーナーは俺の高校時代の先輩で、余程無謀な事じゃない限り、融通を利かせてくれる。
オーナーは俺の計画を、二つ返事で了承してくれた。