第4章 同居…
綺麗に包装して貰った剪定鋏を持って実家を訪ねた。
兄ちゃんが”父の日のプレゼント”だ、って言って剪定鋏を渡すと、親父さんは少しだけはにかんだ様子で…
でも嬉しそうに鋏を眺めては、顔を綻ばせた。
「ありがとう、和也君。まさか君から父の日を祝って貰えるなんて…。嬉しいよ、本当にありがとう」
「いや、あの…、俺は別に、その…」
兄ちゃんが照れ臭そうに頭をポリポリと掻いた。
その様子を、ずっと黙って見ていた母さんも、どことなく嬉しそうに目を細めた。
「今日は和也の誕生日でしょ? 本当に晩御飯食べてかないの?」
だからだよ…
兄ちゃんの…和也の誕生日だからこそ、二人だけで特別な夜を過ごしたいんだ。
「うん。今日はこれからちょっと予定があってさ。だから、兄ちゃんの誕生日は、また後日ってことで」
ごめんね、母さん。
「そう? じゃあ都合の良い日があったら、前もって連絡頂戴ね?」
「分かった。あ、それとコレ…。新しい部屋の鍵なんだけどさ、預かっといてくんない?」
俺はポケットから鍵を一つ取り出すと、母さんに向かって差し出した。
母さんはそれを受け取ると、家の鍵やら車のキーが付いたキーホルダーに一緒にぶら下げた。
「じゃあ、また来るから…母さん」
玄関先まで見送りに出た母さんに手を振ると、俺達は車に乗り込んだ。