第1章 兄弟…
潤side
まさか兄ちゃんの方から俺を尋ねて来てくれるなんて、思ってもなかった。
喜びのあまり油断すれば緩みそうになる顔の筋肉を、何とか堪えるのに俺は必死だった。
挨拶を交わした時、兄ちゃんが緊張してるのが分かった。
俺は兄ちゃんをランチに誘った。
向かい合って座った兄ちゃんの顔は、やっぱり緊張で強ばっていて…でも、
「兄ちゃん何にする?」
そう言った途端驚いたような顔をするから、俺は思わずクスッと笑ってしまった。
食事も終わり、食後のコーヒーを楽しむ頃になって、漸く兄ちゃんの緊張も和らいできたのか、少しずつ会話も弾み始めた。
「なぁ、俺達って本当に兄弟なのか? 腹とか種が違う、ってことないよな?」
唐突に言われて、俺は飲みかけたコーヒーを吹き出しそうになった。
「いや、そんな話は聞いたことないけど…。もし仮にそうだとしても、どっちかは同じなんだから、やっぱり本当の兄弟なんじゃないの?」
「そっか、そうだよな…」
妙に納得した様子で、兄ちゃんはまたコーヒーを啜った。
「あ、そろそろ休憩終わりだ。兄ちゃん、また会える?」
慌ただしく席を立つ俺に、兄ちゃんが財布の中から名刺を出して寄越した。
そこには『ゲームクリエイター 二宮和也』そう書いてあった。
「そこに俺のアドレス書いてあるからさ、いつでも連絡くれよ? 俺、フリーランスだから自由なの」
そう言って兄ちゃんは優しい笑顔とウィンクを一つした。