第3章 潤…
「でもさ、自分で買うのもなんかアレだったから、知り合いで、こうゆうの趣味で造ってる奴に頼んだんだ。だけどさ、ソイツがまたのんびりしたヤツでな? 隣で急かさないとダメでさ…」
「もしかして…その人のトコ行くために、俺とは会わなかったの?」
兄ちゃんにそんな知り合いがいた事も初耳だったけど、それよりも何よりも、兄ちゃんが俺以外の人とずっと一緒にいた、ってことの方が俺には重要で…
「まぁ、そうだな…」
俺のため、って分かってはいても、なんだか許せなくて…
「サプライズはさ、嬉しいよ? この指輪だって、超嬉しい。だけどね?」
俺、嫉妬してるよ?
「和?」
そう呼ぶと、兄ちゃんが顔を上げた。
「俺さ、もう一個欲しい物あるんだけど…。聞いてくれる?」
ずっと願っていたこと…
「誕生日だからな? 俺に出来ることなら聞いてやるよ?」
「前にさ、約束してくれたよね? いつか…、って」
忘れたとは言わさないよ?
「あの約束さ、今日じゃダメ?」
断れないよね?
だって俺、誕生日だから…
「…………」
俺を見つめる兄ちゃんの瞳が大きく揺れた。
そして、暫くの沈黙の後、兄ちゃんが大きく深呼吸を一つした。
「…分かった。いいよ? お前に抱かれてやる」
緊張で強ばった顔に無理矢理笑顔を造って、兄ちゃんの細めた瞳が俺を見つめた。