第3章 潤…
「で、この後どうすんの?」
俺が聞くと、兄ちゃんは急に真剣な顔を俺に向けてきた。
「ホテル、取ってあんだけどさ…」
その言葉に俺の心臓がまたしても激しいダンスを踊り始める。
俺の心臓、そのうちぶっ壊れるかも…
「…いい…よ?」
俯き加減でそう答えると、兄ちゃんの手が伝票をひっ掴み、
「行くぞ」と腰を上げた。
「あ、うん…」
届いたばかりのホットコーヒーには未練を残しつつ、俺は兄ちゃんの後ろをついて歩く。
店を出て車に乗り込むと、告げられたホテルの名前に驚かされる。
「そこって、超高いホテルじゃん…」
「予約はしといたから」
金には細かい兄ちゃんが、一泊ン万円もするようなホテルを予約していたことに更に驚かされ…
それと同時に普段は着慣れないスーツを着てきた理由も、少しだけ分かった気がする。
普段の兄ちゃんの出で立ちじゃあ、フロントは愚か、エントランスさえ潜ることもままならず、それこそ門前払いだってされ兼ねないからね。
車寄せに車を停め、俺は後部座席からジャケットを取り出した。
「お前そんなモンまで持ってんの?」
信じられないと言った様子で俺を見る兄ちゃん。
「いつ何時何が起きてもいいように、一応はね?」
「はぁ~、出来る男はすることが違うね」
嫌みを含んだ言葉に、”どうも”と小さく返して俺達は車を降りた。