第3章 潤…
挨拶もそこそこに実家を飛び出した俺は、兄ちゃんと初めて会ったファミレスへと車を走らせた。
兄ちゃんに会える…
どんな高価なプレゼントよりも、そのことが嬉しかった。
ファミレスに着くと、笑顔で迎える店員を無視して、足早に窓際の席に向かう。
「兄ちゃん…」
窓の外をぼんやり眺めていた兄ちゃんが、ゆっくり俺を振り返る。
「早かったな?」
「だって兄ちゃんに会えると思ったら俺…」
向かいの席に腰を降ろすと、兄ちゃんの手が伸びてきて、俺の額に張り付いた前髪を指で梳いた。
一瞬俺の心臓が、口から飛び出るんじゃないかってぐらい、大きく高鳴った。
なんだろう…
いつもと違う兄ちゃんの雰囲気に、ドキドキが止まんねぇ…
「どした?」
兄ちゃんが俺を覗き込む。
「えっ、あぁ…いや、スーツなんて珍しいなぁ、って思って…」
兄ちゃんとあれ以来何度も会ってるけど、スーツ姿なんて初めてで…
「そうか? ま、あんま普段着ないけどね?」
そう言って照れ臭そうに笑う兄ちゃんに、必要以上にドキドキしてしまう。
なんか俺、今日変だ…
「お前飯は?」
「実家で食べてきた…オムライス…」
「うそ、マジか…。俺も食いたかったな、オムライス」
心底悔しがる兄ちゃんに、思わず笑いが込み上げる。
「美味しかったよ?」
追い打ちをかけるように言うと、兄ちゃんの拳骨が降ってきた。