第3章 潤…
「潤君も飲むだろ?」
当たり前のようにビールを薦めてくる親父さんに、車なんでとやんわり断りを入れると、親父さんは残念そうに唇を尖らせたけど、それはもう仕方がない。
俺にだって都合というものがあるんだから…
「ご飯出来たわよ」
キッチンの方から母さんの声が響いた。
「なぁ、潤君? 少しぐらいいいだろ?」
尚も食い下がる親父さんに、
「ダメなもんはダメなんです」
と釘を刺し、キッチンへと向かう。
「なぁなぁ…」
全く子供かよ…
ダイニングの席に着くと、見た目も鮮やかな料理と、美味そうな匂いに、俺の胃袋が鷲掴みにされる。
「さ、頂きましょ?」
声と共に箸スプーンを手に取る。
母さんお手製のデミグラスソースがたっぷりかかったオムライスを一口掬い、口いっぱいに頬張る。
「やっぱうめぇ~、母さんのオムライス」
目の前で母さんが嬉しそうに笑う。
俺の誕生日は決まってこのオムライスが食卓に上がる。
それが子供の頃から当たり前のように続いている。
兄ちゃんの誕生日は…ハンバーグに決定だな。
「和也君、仕事なんだって?」
不意に振られた親父さんの言葉に、俺の手が一瞬止まる。
「うん。なんか色々忙しいみたいだよ? 俺も最近会ってないし…」
そう言って再び手を動かし始めた。