第3章 潤…
そして迎えた誕生日当日。
兄ちゃんとの約束は反故になってしまったけど、その代わりに両親から食事の誘いが舞い込だ。
親に誕生日を祝って貰う年でもないけど、せっかくの年に一度の記念日。
何もしないで一人で過ごすよりは、よっぽどましだ。
夕方になって実家へと向かって車を走らせる。
親父さんのことだから、間違いなくアルコールを薦めてくるだろうけど、今日だけは丁重にお断りするつもりだ。
もしかしたら兄ちゃんの仕事が早く終わるかもしれないから…
そんな淡い期待を胸に抱きながら、車を実家のガレージに停めた。
インターホンを鳴らすことなく玄関ドアを開けると、兄ちゃんの誕生日に家族で撮った写真が目に入った。
あれからもう二か月…
兄ちゃんはたまにだけど、親父さんと連絡を取り合ってるって言ってた。
まぁ、殆どが親父さんからの一方的な物なんだけどね…
「ただいま」
リビングへと続く扉を開け、中を覗き込む。
「やあ、潤君おかえり。ささ、座って座って」
親父さんはいつもの定位置に座って、相変わらず新聞片手に缶ビールを傾けている。
「親父さん良くビール飲みながら新聞なんて読めるね?」
俺の言葉に、親父さんが両手を見て、”そうか?”と言ってクスリと笑った。