第3章 潤…
兄ちゃんの誕生日からおよそ二ヶ月。
今度は俺の誕生日がやってきた。
「お前、誕生日何か欲しい物あるのか?」
兄ちゃんの部屋のベッドで行為の後の余韻に浸る間もなく聞かれた。
欲しい物ね…
そんなの考えたことも無かっった。
だって本当に欲しかった物は、もう手に入ったし…
「ちょっと考えさせて?」
俺は散々悩んだ結果、そう答えた。
「あんま高いモンはダメだからな?」
ってクギを刺されたけどね。
それからの俺は、買い物に出ればショーウィンドウの中が無意識に気になり、値段を見ては首を捻る。
ソレがどうしても欲しいわけじゃない。
でもどうせなら…
いやいや、でもこの値段は流石に兄ちゃんもウンとは言ってくれないだろ…
Zeroの数、幾つだよ…
「参ったな…」
一人溜息を落とし、ついでに肩も落とした。
その時ポケットの中でスマホがブルッと震えた。
…兄ちゃん…?
こんな時間に何だろう?
「もしもし、兄ちゃん? 珍しいね、こんな時間にかけて来るなんて」
「ん? あぁ、あのさ、30日のこと何だけどさ、悪ぃ、急な仕事入ってさ…その…」
「気にしないで? その変わり、埋め合わせはタップリして貰うから、覚悟しといてよ?」
先の言葉を濁す兄ちゃんに、俺は精一杯明るく振舞った。
「おぅ、任せとけ」
電話を切ると、また一つ溜息を落とし、肩を落とした。