第1章 兄弟…
潤side
俺には生き別れになった兄がいる。
物心着いた頃から母さんにそう言われてきた。
母さんは飲んだくれの父さんと別れて以来、女手一つで俺を育ててくれた。
所謂“シングルマザー”ってやつだ。
国から受ける補助とパート収入での生活は、決して楽ではなかったが、それでも愛情をたっぷり注いでくれる母さんとの暮らしは、そりゃ幸せだった。
でも同時に、親戚の家をたらい回しにされた挙句、児童養護施設に入れられた兄のことを思うと、少しだけ寂しくもあった。
でも兄さんを引き取るだけの余裕は母さんにはなく、泣く泣く諦めるしかなかった。
そんな母さんにも、俺が18を迎えた頃新たな幸せが訪れた。
そして俺にも初めて“父さん”と呼べる存在が出来た。
でもそうなるとやっぱりたった1人の兄の存在が気になって…
社会人となった俺は、施設を退所した後の兄、和也の行方を探すことにした。
たった1枚残された写真を頼りに…
そうして漸く探し出した兄“和也“が今、俺の目の前にいる。