第2章 和…
俺と“親父さん”は顔を見合わせると、ダイニングへの扉を開けた。
「えっ、なに?」
ダイニングの照明が全て落とされ、真っ暗な中ポワンと浮き上がるオレンジの光。
そして、
「兄ちゃん、誕生日おめでとう!」
の声と同時に、破裂音と共に舞い散る紙吹雪。
「なに、なんなの?」
「ほら、兄ちゃん座って?」
潤が俺の肩を抱いて椅子に座らせた。
「兄ちゃん、ロウソク消してよ」
「あ、あぁ、うん…」
俺は言われるまま、ロウソクの炎を吹き消した。
「おめでとう、和也…」
「えっ、う、うん…」
本当は“ありがとう”って言いたいのに、天邪鬼な俺はそのたった一言が言えなくて…
でも、胸に込み上げる熱い物は、涙になって俺の目から溢れてて…
パチンと音を立てて点けられた照明に、慌てて腕で拭うけど、潤はそれを見逃さない。
「兄ちゃん…、もしかして泣いてんの?」
「ち、ち、違うわ! 泣いてなんか…」
ない…
それ以上言葉が出てこなかった。
気付いたら、俺は“人生初”なんじゃないかってくらいに、めちゃくちゃ泣いてた。
泣きながら、“母さん”の手作りのケーキを食べた。
ケーキの味なんて、全然分からなかった。
でも、それはとても甘くて、とても暖かい味がした。