第2章 和…
騙された、って気付いた時にはもう遅くって…
勢い良く開かれた扉と同時に、俺の目の前には写真の中のその人が立っていた。
「…和也なの? 本当に和也なのね?」
写真よりも少しだけ老け込んだその人は、俺と良く似たぷっくりとした手で、俺の顔を撫でた。
この人が俺を産んだ人なの?
「感動してるとこ悪いんだけど、俺腹ペコペコなんだよね…」
潤の言葉に我に返ったのか、その人は指の腹で目尻に溜まった涙を拭った。
「そうね、ご飯にしましょ? さ、和也も入って?」
「ほら、兄ちゃん?」
俺の肩を潤が押した。
「ん、ああ…。おじゃま、します…」
一歩足を踏み入れると、綺麗に整頓された下駄箱の上に、綺麗な額に入れられたあの写真を見つけた。
「潤、これって…」
「これね、なんか知んないけど、ずっとここに飾ってあるんだ」
俺達を引き合わせてくれたたった一枚の写真が、そこにあることが、何故だか凄く嬉しかった。
「兄ちゃん…和、まだ緊張してる?」
「いや、緊張は…やっぱしてんのかな?」
俺は自嘲気味に笑って、漸く靴を脱いだ。
リビングに通されると、シンプルなソファに、眼鏡をかけて新聞を捲る男性の姿。
「親父さん、ただいま。兄ちゃん連れてきた」
どうやら潤が“親父さん”と呼ぶこの人が、“母さん”の再婚相手、らしい。