第2章 和…
でも今年は違った。
潤がいつも以上にしつこかったのは勿論のこと、俺を産んだ人…つまり母さんの体調が思わしくない、そう言われたからだ。
俺は渋々実家に行くことを承諾した。
そして迎えた6月17日。
俺の33歳の誕生日だ。
潤の終業時刻に間に合うように俺は家を出た。
この日のためにと、潤が用意してくれた服を着て。
待ち合わせは潤がよく利用するファミレスにした。
約束の時間よりも早く着いた俺は、いつも潤が座る席に座って、コーヒーを頼んだ。
コーヒーがテーブルに運ばれてくるのとほぼ同時に、店の入り口が陽気なメロディーを奏でながら開いた。
片手をかっこよく上げて入ってきた潤は、俺の前に座るなり、熱々のコーヒーに口をつけた。
「あっちぃ~」
そりゃそうだろ、今来たばっかなんだから…
それに、
「俺まだ一口も飲んでないけどね?」
「ん? そうなの? …ってか、火傷した」
潤が赤くなった舌をペロッと出して見せた。
「人の横取りすっから、罰が当たったんだよ」
「だってもうゆっくりコーヒー飲んでる時間ないし」
しきりに時計を気にする潤に急かされるように、俺はまだ熱いコーヒーを飲み干した。
寝起きは悪いくせに、変なところが潤はせっかちだ。
会計を済ませて店の外に出た時には、潤はもう車に乗り込み、エンジンをかけて俺を待っていた。
「母さん待ってるから、急ぐよ?」
「お、おぅ…」
あ、急に緊張してきたよ、俺…。