第11章 決断…
「あんた達の父さんと別れてから、コツコツ…あんたが結婚する時に持たせようと思って貯めておいたのよ…。でももうその必要は無さそうだから…」
「母さん…」
数字にしたらそれ程大きな額とは言えないけど、そこにはきっと血の滲むような母さんの苦労があったんだと思うと、胸が熱くなる。
「それから…、これは和也の分…」
「えっ…?」
期待…してなかった訳じゃない。
でも俺と潤とでは、一緒に過ごした時間の長さには大きな差がある。
だからこそ俺はどうしても手を出すことが出来なくて…
俺の躊躇いを察したのか、親父さんが俺の方を見てコクリと頷いて見せた。
そして潤も…
「兄ちゃん…?」
「あ、ああ…」
二人なな背中を押されるようにして、漸く母さんの手から熨斗袋を受け取ることが出来た俺は、微かに残る母さんの体温を確かめるように、熨斗袋を握りしめた。
「開けてみたら?」
「あ、ああ、そう…だな…」
潤のに比べてやたらと分厚い熨斗袋の封を開け、中の物をテーブルの上に出す。
「これ…、何で…?」
熨斗袋から出て来たのは、通帳でも…キャッシュカードでもなく、20以上はあるだろうポチ袋で…
その表面には、俺の名前と歳が書かれていた。
父さんと別れてから、俺達が再び家族に戻るまでの、ね…