第11章 決断…
改めて新年の挨拶を交わしながら、金箔入りの日本酒で乾杯をする。
きっと当たり前の光景なんだろうな…
でも、ずっと一人でいた俺にとっては、豪華なお節料理も、金箔入りの日本酒も初めてのことで…
何もかもが新鮮に感じた。
「あ、そうだ。親父さんが電話で言ってたけど、お年玉って…?」
数日前に母さんを泣かせたばかりなのに、何事もなかったかのように接する潤が羨ましく思える。
もしかしたら、俺のために“あえて”そうしてるのかもしれないけど…
「ちょっと待ってなさい」
母さんが箸を置いて席を立つ。
そのまま和室を出て行く母さんの背中は、どこか寂しげにも感じて…
俺はじっとその背中を見つめていた。
そして何分も待つことなく戻って来た母さんの手には、封筒のような物が握られていて…
良く見ればそれは熨斗袋らしく…
大袈裟に咳払いをしてから元の席に着いた母さんは、その一つを潤の前にトンと音を立てて置いた。
「これ…は…?」
「お年玉だって言ったでしょ? 開けてご覧なさい」
「う、うん…」
潤が戸惑いがちに熨斗袋を手に取り、そっと封を開ける。
「え、これって…、何で…?」
中から出て来たのは、潤の名義で作られた通帳で…
やっぱり戸惑いを隠せない潤は、通帳のページを捲る度に目を丸くして行った。