第11章 決断…
玄関先で新年の挨拶を済ませ、俺達は和室に通された。
潤曰く、特別な来客がある時や、正月とか…とにかく特別な日しか滅多に使わない部屋だそうだ。
実際俺も何度か訪ねてはいるが、この部屋に通されたのは初めてかもしれない。
お節料理の詰められた重箱が並ぶ、冬の風物詩とも言えるコタツに足を突っ込み、背中を丸める俺達の前に、二人が並んで座る。
何日か前に会ったばかりなのに、まるで初対面の時の様に緊張してしまうのは、何故なんだろう。
「そうだ…、二人共今日は飲めるんだろ?」
親父さんが、正月らしくラベルに“金箔入り”と書かれた一升瓶を持ち上げる。
「どうする、兄ちゃん…」
潤が肘で俺を小突いて、耳元に口を寄せる。
どうするも何も…、その可能性も考えて車で来なかったんじゃないのかよ…
俺は目の前に伏せられたお猪口を手に取ると、親父さんの前に差し出した。
「この後友達と会う約束してんで、ちょっとだけ…」
って、有りもしない予定を口にしながら…
潤は一瞬驚いたような顔をしてたけど、俺の意図を察したのか、
「正月…だしね? せっかくだから俺も貰おうかな…」
俺を真似てお猪口を親父さんに向かって差し出した。
「そ、そうかい? 無理に付き合わせるみたいで申し訳ないが…、正月だし…、せっかく家族がこうして顔を合わせたことだし…、母さんも一杯くらいどうだ?」
「そ、そうね…」
親父さんに言われて、母さんもお猪口を手に取った。