第11章 決断…
同じだ…、と思った。
俺も自分で自分の性癖を認めるまでは、周りの奴らと同じように女を好きになろうともした。
でもどうしても出来なかった。
無理して好きになろうとすればする程、心と身体のバランスが取れなくなって…
結局、好きになるどころか、違和感しか感じられなくなった。
だから、潤が何を言いたいのか、それが何を意味するのか、俺には理解も出来るし、感じている痛みも分かる。
ただ、母さんや親父さんは違う。
「そ、それじゃ…今まで騙されてたってことなの?」
「違う、そうじゃない…」
「だってそうじゃない。中学の時も、それから高校の時も、彼女だって紹介してくれたのも、みんな嘘だったんじゃないの…」
「それ…は…。で、でも、その時は本当に気付いてなかったんだ、自分が男の人しか愛せないってことを…」
「やめて…、もう聞きたくてないわ…」
母さんが席を立ち、逃げるようにキッチンへと駆け込む。
背中を向けているせいか、表情は分からないが、シンクに向かって流れる水を見つめる顔は、きっと悲しみにくれているんだと思う。
「母さ…」
「気持ちは分かるが、今は一人にしてやりなさい」
母さんの様子が気になったのか、潤が席を立とうとするのを、親父さんの手が引き止めた。