第11章 決断…
母さんの…、湯呑みを持つ手が、カタカタと震えていた。
それに気付いた親父さんが、そっと母さんの手から湯呑みを取り上げ、コトリ…とテーブルの上に置いた。
そして銀縁の眼鏡を外し、胸のポケットに仕舞うと、俺と潤…交互に視線を送った。
「何て言ったら良いのか…、正直なことを言えば、悪い冗談であって欲しいと思っているが…、そうじゃないんだね?」
悪い冗談、か…
本当にそうであったら、どんなに気が楽なんだろうな…
でも、ごめん…
「少なくとも俺は、潤と会う前から男しか愛せなかったし、それは今でも変わらない」
そしてこの先も…
「そうか…。潤は? 潤もその…同じ、なのか?」
俺に言うのとは、明らかに違う、重い口調…
そもそも親父さんと母さんは再婚だから、俺達兄弟にとって“父親”と言っても実の親とは違う。
それでも潤との間には、俺の知らない…積み重ねて来た時間がある。
区別してるわけではないんだろうけど、接し方が違って当然…なのかもしれない。
「俺は…、和みたく子供の頃から…ってわけじゃないけど、でも女の子と付き合ってる時も、いつも無理してた…って言うか…」
まるで自問自答でもしているかのように、潤の顔が険しくなる。