第11章 決断…
潰れたミカンを握る潤の指の隙間から、オレンジ色の雫がポタポタと床に落ちる。
「潤…?」
俺は潰れたミカンを潤の手から受け取ると、テーブルの上に置き、代わりにティッシュを数枚…、潤の手に握らせた。
でも、そんなじゃ全然足りなくて…
「あ、あら…、大変…」
明らかに動揺した様子の母さんが、ガタガタと音を立てて椅子から立ち上がり、フラフラとした足取りでキッチンへと向かう。
その間も親父さんは変わらず新聞から目を離そうとはしない。
いや、俺がそう思ってるだけで、実際は違う。
母さんの背中を横目でずっと追ってるのが分かる。
やがて母さんが濡れたタオルを手に、今度はさっきよりも幾分かしっかりした足取りで戻って来て…
「そ、そうよね…、兄弟だものね…」
言いながら濡れたタオルを潤の前に差し出した。
「付き合ってる…なんて、おかしな言い方するから…。ビックリさせないでよ…」
ねぇ、父さん…?と、母さんが親父さんの肩を叩く。
でも…
「愛し合ってるんだ…。俺と兄ちゃ…和は…」
潤の言葉に、母さんの顔が凍り付き…
「兄弟とか…、そんなじゃなくて、恋人として…」
親父さんが新聞を静かに閉じた瞬間、
「潤…!」
母さんが両手でテーブルを叩いた。