第11章 決断…
俺は携帯用の灰皿に煙草を揉み消すと、上体だけを起こし、丁度膝枕の格好になった潤の髪を指で梳いた。
「お前さぁ、何悩んでんのか知んないけど、それ絶対俺にも関係あることだろ?」
自分だけの問題なら、潤の性格上どれだけ悩んだとしても、もうとっくに答えが出ている筈なのに、未だ答えが出せないってことは、そこに“俺”が絡んでいるからだ。
「違うか?」
目を泳がせてばかりで、中々答えようとしない潤に、もう一度問いかけてみる。
すると潤は、髪を撫で続ける俺の手を掴んで、
「俺ね…、ずっと考えてたことがあるんだ…」
漸くその重い口を開いた。
だから俺は急かすことなく、小さく“うん”と頷くと、潤の手に導かれるまま、まだ紅潮したままの頬を包んだ。
「俺ね、いつかはちゃんと言わなきゃって思って…」
「何を?」
「兄ちゃんと俺のことを…」
「誰…に…?」
「親父さんと母さんに…」
俺の手首を掴んだ潤の手に力が入る。
それだけで、潤がどれ程深く思い悩んでいたのかが分かる。
「でもさ、絶対悲しませることになるよね…?」
「だろうな…」
特に母さんは、口にこそ出さないけど、潤のことを溺愛してるし、早く孫の顔が見たいとも言ってた。
潤自身も、母さんの気持ちを知ってるから、だから悩んでんだろうな…