第10章 非対称…【Extra Edition】
「よし、片付け終わり…。早く帰ろ?」
外したエプロンをカウンター席にかけ、肘まで捲ったシャツの袖を下ろす。
忙しかったのもあるけど、別の意味でも今日は疲れた。
「電気消していい?」
火の元を確認と、カウンターの照明を消すのは俺の役目。
超ド天然男の呼び名も高い雅紀だから、任せるのが心配ってのもあってね(笑)
「消すよ?」
いつもなら返って来る筈の能天気な返事が、今日はない。
その代わりに聞こえて来たのは…
「ふっふふふ〜んふっふ〜♪」
すっごーーーーーーーーーっく、音痴な鼻歌で…
「な、なんなの…?」
キッチンから出て来た雅紀の手には、フルーツがこれでもかってくらい贅沢に盛られたパンケーキで…
「嘘…」
その中央には、ロウソクが立てられている。
「ね、ねぇ、ほんと…に…? 忘れてたんじゃなかったの?」
やばいよ…、こんなの…、泣いちゃうよ…
「はあ? お前何言っちゃってんの? 俺がお前の誕生日忘れると思う?」
「う、うん…、だって去年は…」
「去年は去年でしょ? 今年の俺は去年の俺とは違うの!」
そう…なの…?
俺の目には、去年の雅紀も、今日の雅紀も同じに見えるけど、でもやっぱりどこか違うのかもね…