第9章 家族旅行…
兄ちゃんの写真なんだから、当然兄ちゃんが貰ったって良い筈なんだけど、躊躇ってしまうのは、やっぱり戸惑っているからなんだろうな…
「これ一枚しか残ってないんだろ? だったら…」
そっか…、兄ちゃんは、母さんに持ってて欲しいんだ。
愛されていた記憶を自分が持つよりも、愛してたって証を、母さん自身に持っていて欲しいんだと思う。
その気持ちは、なんとなく…だけど、分からなくもない。
それに、母さんも本当は手元に残しておきたいんじゃないかな…
だった一枚しかない写真なんだから…
「あの…さ、俺思うんだけど…、焼き増ししたら良くない?」
「古い物だし、それにネガだって残ってないのに、そんなこと出来るの?」
そういった類のことには滅法弱い母さんが、信じられないとばかりに目を丸くする。
つか、そんなことも知らなかった事実の方が、俺にしてみれば驚きなんだけどね?(笑)
「うん、ネガが無くても焼き増しは出来るの。なんならデータ化することだって可能だし…。そしたらさ、母さんも、それに兄ちゃんも、お互いに写真持っとくこと出来るでしょ?」
俺の提案に、親父さんが「なるほど」と大きく頷く。
それを見て、母さんも「そうね…」なんて言いながら、少し照れくさそうに笑った。