第9章 家族旅行…
丁度俺の足元に落ちたそれは、どうやら写真のようで…
俺はそれを拾い、そっとひっくり返した。
「これって…。ねぇ、兄ちゃん、これ…」
ん?、と兄ちゃんが俺の手の中にある写真を覗き込んだ瞬間、兄ちゃんの目が再び見開かれる。
それもその筈、そこに写っていたのは、若かりし頃の母さんに抱かれた、産まれたばかりの赤ん坊で…
「違うよ、俺じゃない。お前だろ、これ…」
「俺じゃないって…」
だって、もしこの写真が俺の物だとしたら、ここに写っているのは、明らかに“俺”と分かるくらい、目鼻立ちのクッキリした赤ん坊の筈。
でもそうじゃないってことは、やっぱり…
「これ兄ちゃんだよ。間違いないって。ね、そうでしょ、母さん?」
「そうね、あんたは産まれた時からその顔だったからね(笑)」
うーん…、嬉しいんだかなんだか…、複雑な心境ではあるんだけど、これでこの写真に写っているのが、確実に兄ちゃんであることは判明したってわけだ。
「ほら、やっぱり兄ちゃんだよ。良かったじゃん」
戸惑いの表情を浮かべる兄ちゃんの肘を掴み、石のように固まった身体を軽く揺すってやると、それでもまだ信じられないとばかりに、兄ちゃんが首を横に振った。