第9章 家族旅行…
そしてそれは、兄ちゃんが産まれてからも同様で…
兄ちゃんが風邪を引いた、兄ちゃんがお腹を壊した、兄ちゃんが初めて喋った、兄ちゃんが初めて立った…
綴られる文字、一文字一文字に、母さんの愛情が溢れている。
…っていうか、ちょっと待って?
「ねぇ、俺のにはこんなに細かく書いてなかったけど?」
勿論、初めて“ママ”って言った日や、初めて立った日の日付けだけは書かれてあったけど、ここまで事細かには書いてなかった筈。
「当たり前じゃないの。最初の子は何かもが手探りで、大変だけど、その分新鮮で、感動的で…。でも二人目にもなると、ねぇ…(笑)」
母さんがバツの悪そうな顔で親父さんに同意を求める。
当然、子育て経験ゼロの親父さんは困り顔だ。
「あーあ、話には聞いたことあったけど、二番目ってホントつまんない」
「あら、そんなことないわよ? あんたにだって十分愛情を注いで来たんだから…。ねぇ?」
再度親父さんに同意を求める母さんに、親父さんは苦笑いを浮かべるしかなくて…
俺と兄ちゃんは顔を見合わせると、同時にプッと吹き出した。
その時、何かの拍子に捲れた母子手帳の間から、一枚の紙がヒラリと畳の上に落ちた。