第9章 家族旅行…
包みを膝の上に抱えたまま、中々開こうとしない兄ちゃん…
俺だったら大喜びで開けちゃうんだろうけど、そこはこれまで育って来た環境の違いかな…、母さんからの贈り物に戸惑いを隠せないんだと思う。
俺はテーブルの下で兄ちゃんの手をそっと握った。
兄ちゃんの戸惑いが和らぐように…
「開けてみたら?」
「そ、そうだな…」
兄ちゃんが小さく頷いたのを確認してから、握った手をそっと解くと、兄ちゃんの手がゆっくりと結び目を解いた。
そして包みを開いた瞬間、兄ちゃんの目が今にも落っこちそうなくらいに、大きく見開かれた。
「これっ…て…」
「和也のへその緒と母子手帳よ」
「えっ…、でもだって…、そんな…」
小さな桐の箱と、一目見てそれと分かる可愛らしい表紙の冊子に、兄ちゃんが激しく動揺してるのが分かった。
それも当然だ。
俺の物はともかく、兄ちゃんの物が残ってるなんて、兄ちゃんも…俺だって思ってもなかったんだから…
「ねぇ、一体どうして? 母さん、兄ちゃんの物は手元に何も残ってないって…」
そう…、唯一残っていたのは、俺が赤ん坊の頃の、あの写真だけだって…
俺もその言葉をずっと信じて疑わなかったのに、どうして…?