第9章 家族旅行…
仕方なく…、本当に仕方なく、トイレで中心に溜まった熱を吐き出し、息を整えるのと同時に、乱れた浴衣も整えた。
ルームキーとスマホを手に部屋を出ると、すぐ隣の部屋のドアを叩いた。
ドアを開けてくれたのは母さん。
普段から化粧っ気はないけど、温泉に浸かったおかげなのか、肌がいつもよりツヤツしている。
「ほら、早く入んなさい。父さんも和也も、あんたが来るの待ってたんだから…」
「ごめんごめん…」
母さんに促されて部屋に入ると、テーブルの上には海の幸が盛り沢山の料理が、所狭しとならんでいて…
「凄いじゃん♪」
自称グルメの俺は、それだけでテンション急上昇。
「さ、早く座って…」
「はい」
親父さんに言われて、兄ちゃんの隣に腰を下ろした。
すると見計らったかのように差し出されるビール瓶。
「今日は二人とも飲めるんだろ?」
「そうよ、お父さん、あんた達と飲むの楽しみにしてたんだから…、ね?」
「ま、まあ…な…」
そっか…
いつも運転があるから、って断ることが多いから…
「たまにはいいよね、兄ちゃん?」
「そうだな…、せっかくだし…」
うん、こんな機会滅多にないから、今日くらい羽目を外したっていいよね?
俺は親父さんからビール瓶を受け取ると、待っていたように差し出されたグラスにビールを注いだ。