第9章 家族旅行…
「っていうかさ、お前親父さんと風呂入ったことないの?」
部屋に戻り、スマホ片手に畳の上に寝転がった兄ちゃんが言う。
つか、せっかく旅行に来てんのに、またゲームだよ…
ゲームに嫉妬したって仕方ないのは分かってるけど、やっぱり焼けちゃうよ…
「おい、聞いてる?」
「え、あ、うん…、親父さんとお風呂でしょ? うーん、ない…かな…」
「へぇ…、そうなんだ…」
スマホゲームに兄ちゃんを独占されるのも癪だから、普段はあんまりしないことなんだけど、俺も兄ちゃんの隣りに寝そべり、頬杖をついた。
「うん、だって母さんが親父さんと再婚したのって、俺が18の時だよ?」
その時点で風呂に入るのに親の手を必要とする年齢は、とっくに過ぎてる。
「それに日帰りとかはあったけど、泊りがけの旅行なんてしたことなかったし…。だから今回が初めての裸の付き合い、ってこと」
「そっか…」
まあ、初めての裸の付き合いは、かなり衝撃的だったけどね(笑)
「あ、ねぇ、もしかして兄ちゃん…、親父さんの見て興奮しちゃったとか?」
俺の話はちゃんと聞いてくれてるんだろうけど、視線がゲームに向いてるのがどうにも寂しくて、そんなことは絶対にないって分かってるのに、つい意地悪をしてしまう。