第9章 家族旅行…
「じゃ、後で行くね」
ありがたいことに、俺達の部屋は母さん達とは別に用意されてて…
多分親父さんが気を使ってくれたんだと思うけど。
受け取った鍵で、これまた純和風の引き戸を開けると、早速木の匂いと畳の匂いがプンと香って、“ザ・日本”を感じる。
「わ、兄ちゃん見て見て! 海だよ!」
「すげぇ…」
窓の外に広がる絶景に、俺達は揃って溜息を漏らした。
「なあ、これってさ、俗に言うアレだろ? ほら、オーシャンなんとかって…」
「オーシャンビュー?」
「おお、それだそれ…。俺、こんなん初めてかも…」
良かった…
“うん”とは言ったものの、本当はあんまり気乗りしてないんじゃないか、って不安だったんだ。
「ね、温泉行かない?」
今の時間なら空いてるだろうし、運が良ければ兄ちゃんと俺だけの貸切…なんてこともあるだろうし…
つか、密かに期待してるんだけどね?(笑)
俺は二人分の浴衣と半纏、それから持って来た下着を用意すると、じっと窓の外を眺める兄ちゃんの肩を抱き、顎先にそっと指をかけた。
「兄ちゃ…、和…?」
特別な呼び方で兄ちゃんを呼ぶのは、俺が兄ちゃんからのキスを期待してるから…
でも兄ちゃんたら意地悪なんだ。
「よし風呂行くぞ」
ってさ…
絶対俺の気持ち気付いてるよね?
もぉ…、兄ちゃんのバカっ…