第9章 家族旅行…
ところが、だよ?
意外や意外、珍しく兄ちゃんが乗り気で(笑)
俺は兄ちゃんの気が変わらないうちにと、親父さんと相談しつつ日程と、行き先を決め…
で、現在に至る…、って訳なんだけど…
これがまあなんつーか…、別に気不味いとかじゃないんだけど、とにかくぎこちないって感じ?
そもそも親父さんが悪いんだよ、助手席に母さん座らせたりするから…
だいたい、兄ちゃんの隣は、俺の場所って決まってんのに…
兄ちゃんと母さんの距離を縮めるだし、仕方ないか…
「あ、ねぇ、今日の夕飯てさ、やっぱ海鮮メインだよね?」
「ああ、確認はしてないけど、おそらくそうだろうね…」
「だよね…」
旅館の料理なんて、大抵が海鮮メインと相場が決まってる。
と、なると…
念の為にと思ってカップラーメン持って来て良かった(笑)
なんたって兄ちゃんは生魚とかあんま得意な方じゃないからさ。
ま、兄ちゃんは変に気ぃ遣わせるから、気にすんなって言うけどね。
でも俺としては、やっぱりね?
「おっ、あの建物じゃないか?」
親父さんが身を乗り出して、前方に見える純和風な建物を指さす。
「ほら、"嵐旅館"って看板が見えるだろ?」
「へぇ、あれか」
想像してたよりも、うんとリッチ感漂う光景に、俺のテンションが一気に上がった。