第9章 家族旅行…
それは、突然(…でもないけど)かかって来た、
「たまには旅行でもしないかい?」
親父さんからの一本の電話で始まった。
多分…なんだけど、親父さん的に気を使ってのことだと思うんだ。
いつまで経っても、中々縮まらない母さんと兄ちゃんの距離を、親父さんはずっと気にしていたから。
勿論、俺だって気にならなかったわけじゃない。
一緒に飯食ってても、な~んかよそよそしいっていうか…、そんなのは感じていたわけで…
仕方のないことだってことは、俺も、それから親父さんだって十分理解はしてる。
なんたって二十年以上も離れて暮らしてたんだから、「はい、そうですか」って普通の親子になれるわけもないんだから。
しかも、兄ちゃんのあの性格だから尚更だ。
もし俺が兄ちゃんの立場だったら…もう少し上手くやれてるだろうからさ(笑)
だから、親父さんの提案は、兄ちゃんと母さんの距離を縮めるのには、もってこい…だたは思うんだけどなぁ…
ただ…さ、兄ちゃんが素直に誘いに乗ってくれるかどうか…、それが問題だ。
ほら、兄ちゃんてさ、超が付く程のインドア派人間だから、基本あんまり外に出たがらないんだよね…
まして家族旅行なんて…、ねぇ?
行くと思わないじゃん?