第8章 秘密…
早々に支度を済ませて玄関で潤を待つ。
着る物に拘りのない俺に対して、潤はファッションにもけっこう煩いから、こうして待たされるのはいつものこと。
他の奴ならイラつくこともあるけど、潤に待たされるのは、全く…とまでは言わないけど、そう苦でもない。
「ごめん、お待たせ。行こうか」
「お、おう…」
つか、なんでスーツ?
比べて俺は、いつも通りのくたびれたTシャツに、ラフさ極まりないハーフパンツといったいでたちで…
「お、俺、着替えてくるわ…」
慌ててサンダルを脱ぎかけた俺の腕を、潤手が掴む。
「いいよ、兄ちゃんはそのままで…。俺、そのままの兄ちゃんがいい」
「で、でも…」
俺が恥かくのは、全然構わないけど、潤には恥ずかしい思いさせたくない。
「やっぱ着替えてくる。すぐだから待ってろ」
潤がの手を解き、見上げる頬に一つキスをしてから、俺はバタバタと自室に駆け込んだ。
…とは言ったものの、俺そんなに服のレパートリーないんだよな…
それでもヨレたTシャツよりはうんとマシなポロシャツを着て、くたびれたハーフパンツはデニム地の物に履き替えた。
あんま変わんないような気もするけど、さっきよりはずっといい。
「悪い、待たせた。行こうぜ」
「うん」
潤の手を引いて玄関を出ると、俺達は手を繋いだままエレベーターに乗り込んだ。
「兄ちゃん、手…」
「いいだろ、誰も見てないし…」
真っ赤になる潤が可愛い。