第8章 秘密…
「あ、兄ちゃん今日の予定は?」
トーストを頬張りながら、潤が緊張気味の笑顔を俺に向ける。
「いや、特にはないけど…?」
誕生日だから、って数少ない友達からの誘いも断っちゃったし…
「じゃ、じゃあさ、ちょっと出かけない? 俺さ、どうしても兄ちゃんと行きたい場所があってさ…」
「俺と行きたい場所…?」
「うん。あっ、でも無理にとは…」
一瞬にして曇る潤の顔。
潤にこんな顔させる自分に腹が立つ。
「いいぜ、どこだか分かんねぇけど、行こうぜ?」
俺は残りのトーストを口に押し込んで、コーヒーで一気に流し込んだ。
「いい…の?」
「当たり前だろ? ほら、さっさと食えよ」
「うん!」
本音を言えば、俺の性格上外に出るのは億劫にしか感じない。
出来る事なら、一日中誰とも顔を合わせることなく、会話だって必要がなければしたくないし、トイレだって飯だって、面倒なだけ。
でもさ、潤なら…潤となら全然嫌じゃないんだ。
寧ろ、ずっと顔を見ていたいし、会話だってしたい。
結局のところ、俺は潤が好きなんだ。
好きだからこそ、噓をつかれたり、隠し事をされたりするのが、寂しくて…
潤を独り占めしたいって、潤の全てを知っていたい、ってさ…
でもそれって俺の我儘なんだよな。
お互い”好き”って気持ちさえあれば、別に秘密があろうがなかろうが、どうだっていいことなのに…
そんな簡単なことに、漸く気付いたんだ。