第7章 バングル…
朝食も終わり、後片付けを翔さんにお任せして、俺たちは作業を開始した。
棒状になったシルバーをハンマーで叩いて伸ばす。
ここまでは、いくら不器用な俺でも、何の問題もないし、寧ろ完璧じゃない?
「じゃあ、今度はここに“Silver”の刻印をするんだけど、どうする? 他にも何か入れる?」
「何か、ってなんだよ?」
「うーん、例えば名前とか、後は記念日とか…かな」
成程…
マリッジリングとかの裏にある、メッセージ的な“アレ”か…
「兄ちゃん、俺入れたい。ってか、いれよ?」
強請るように兄ちゃんを見ると、兄ちゃんが“当然だろ”とばかりにウィンクをして寄越した。
「じゃあさ、和のには弟くんの誕生日で、弟くんのには和の誕生日を入れる、ってのは?」
智さんの提案に、俺たちは顔を見合わせると、大きく頷いてから、智さんが用意してくれた、刻印用の小さな数字を手に取った。
伸ばした板の上に、数字を順にハンマーを使って打ち込んで行く。
一見簡単なように見えて、これが中々どうして…
真っ直ぐに打ち込んだつもりの数字は、まるで蛇行するようにうねっていて…
「あれ、おかしいなぁ…。その薄く書いた線に沿って打ち込んでくだけなのに…」
俺の手元を見ながら、智さんが苦笑いを浮かべて首を捻った。
「なんか、すいません…」
「いいんだよ、謝んなくたって。君の不器用さ加減は、さっきお料理した時に確認済みだから」
えっ、じゃあ何?
こうなることは、想定済みだった、ってこと?
うわぁ…、俺超恥ずかしい奴じゃん…