第2章 始まり
もうここに来てから驚きっぱなしで、もう驚くこともないと思ったがそうもいかないようだ。
『生まれ変わる...?望みが叶う...?どういうことですか?』
信じられないと思いながらその黒猫を見ると、その黒猫は優しい笑みを崩さずにいた。
「わたしはお前に助けられた。だからお前の願いを叶えようと思ったのだ」
私がこの黒猫さんを助けた...覚えていない。不思議に思っているのが伝わったのか、その黒猫は立ち上がると、その黒猫は光に包まれた。あまりの眩しさに目を閉じ、光がおさまったのを見計らい目を開けると、そこにいたのは黒猫ではなかった。白くて長い髪の毛に、着物を着た見た目は若い男の人がいた。
『くろ...ねこ...さん?』
私の問いに目を細めるとこくりと頷き、その男の人は私に問いかける。
「優美、わたしのことを覚えていないか?」
期待するような表情に、思い出そうと考え込んだ。しかし思い当たらず、その人をよーく見る。しばらく考え込んだが思い当たったのだ。
私が一時的に家に戻ることを許されたある日、父は仕事、母はどうしても仕事で行かないといけなくなり、妹を保育園に急遽預けて出掛けて、一人だったのだ。寂しくなった私は近くの公園に向かった。そこは小さな公園で人は少なく、私はブランコに腰を掛けると小さくこいだのだ。
しばらくこいでいると、どこからか声が聞こえた気がした。ブランコを漕ぐのをやめると、草むらの方から微かに声が聞こえてくる。どうしようか迷ったが、あまり外に出ることのなかった私は好奇心に負けて、おそるおそる草むらに近寄って覗きこんだ。そこには人が倒れていた。それがこの黒猫だったのだ。