第87章 S・P・E・W
「そうね、参加校の校長は必ず審査員になるわね。1792年の試合で、選手が捕まえるはずだった怪物の'コカトリス'が大暴れして、校長が3人とも負傷してるもの」
ハーマイオニーがそう言ったので、みんな、かなり驚いていっせいに振り向いた。みんなの視線に気づいたハーマイオニーは、私の読んだ本をほかの誰も読んでいないなんて、といういつもの苛立ったような口調で言う。
「'ホグワーツの歴史'に全部書いてあるわよ。もっとも、この本は完全には信用できないけど。'改訂ホグワーツの歴史'のほうがより正確ね。あと、'偏見に満ちた選択的ホグワーツの歴史:不都合な部分を削除した歴史'もいいわ」
「なにを言いたいんだい?」
私にはハーマイオニーが何を言いたいかわかったため、視線をそらす。
「屋敷しもべ妖精!」
予想通りのことをハーマイオニーが声を張りあげて言った。
「ホグワーツの歴史は千ページ以上あるのに、百体もの奴隷の圧制に、私たち全員が共謀してるなんて、一言も書いてないの!」
私は、気まずく思いながらご飯を食べることに集中する。ハーマイオニーは、屋敷しもべ妖精の権利を追求することに熱心になっていた。私とクレア達のことは諦めたみたいだが、毎晩グリフィンドールの談話室を精力的に駆け廻り、みんなを追いつめては、その鼻先で寄付集めの空き缶を振るっていた。
ネビルなどの何人かは、ハーマイオニーに睨みつけられるのが嫌で2シックルを出していた。何人かは、ハーマイオニーの言うことに少し関心を持ったようだが、それ以上積極的に運動に関わることには乗り気ではない。生徒の多くは、冗談扱いにしていたのだ。
「まあ、聞け、ハーマイオニー。君は厨房に降りて行ったことがあるかい?」
フレッドは急にベーコンを食べることに夢中になったが、一方ジョージはハーマイオニーのほうに身を乗り出して言った。
「もちろん、ないわ。学生が行くべき場所とはとても考えられないし...」
そっけなく答えたハーマイオニー。
「俺たちはあるぜ。何度もある。食べ物を失敬しに。そして、俺たちは連中に会ってるが、連中は幸せなんだ。世界一いい仕事を持ってると思ってる...」
「それは教育も受けてないし、洗脳されてるからだわ!」
フレッドの方を指差しながら言ったジョージに、ハーマイオニーは熱くなって話し始めた。