第85章 マッド・アイ・ムーディ
「ミアは〜どうしてそんなに楽しみなの〜?」
楽しみにしている様子のミアにエイミーが問いかける。確かに、すごく楽しみにしているようだ。
「え?あー...私も友達から授業を受けた話を聞いたのよ。それで楽しみにしていただけよ」
ミアは明らかに動揺しているように見える。私とクレアとエイミーは顔を見合わせてそっとしておこうということになった。何をするか知っている私は、少し気が重くなりながらも表情に出さないよう努力して、教室に入る。ただ、3人に向けてこう言う。
『私は、後ろの席でいいわ。3人共、前にいきたいなら私のことは気にしないで』
目の前で見ることはしたくなかったからだ。クレア、ミア、エイミーは顔を見合わせた。
「私は、後ろの席でいいわよ」
「えぇ、どこの席でもいいわ」
「私も〜」
クレアの言葉にミアとエイミーも同意したため、私達は後ろの席に座り教科書を出す。まもなく、廊下を近づいて来るコツッ、コツッという音が聴こえてきた。紛れもなくムーディ先生の足音だ。そして、いつもの不気味な、恐ろしげな姿で入って来た。
「そんな物、仕舞ってしまえ。教科書だ。そんな物は必要ない」
コツッ、コツッと机に向かい、腰を下ろすとすぐに、ムーディ先生が唸るように言う。みんなが教科書を仕舞うと、ムーデイ先生は出席簿を取り出し、傷痕だらけの歪んだ顔にかかるたてがみのような長い灰色まだらの髪の毛を振り払い、生徒の名前を読み上げはじめた。
普通の目は名簿の順を追って動いていたが、魔法の目はグルグル回り、生徒が返事をするたびに、その生徒をじっと見据える。出席簿の最後の生徒が返事をし終えると、ムーディ先生が言った。
「よし、それでは。このクラスについては、ルーピン先生から手紙をもらっている。おまえたちは、闇の怪物と対決するための基本をかなり丹念に学んだようだ...ボガート、レッド・キャップ、ヒンキーパンク、グリンディロー、河童、ワーウルフなど。そうだな?」
みんなが、同意するざわめきを立てる。
「しかし、おまえたちは、遅れている...非常に遅れていることがある......呪いの扱い方についてだ。そこで、わしの役目は、魔法使い同士が互いにどこまで呪い合えるものなのか、おまえたちを最低線まで引き上げることにある。わしの持ち時間は1年だ。その間におまえたちに、どうすれば闇の...」