第85章 マッド・アイ・ムーディ
ドラコは新聞を手に持っているのだろうか。私のところからは見えない。
「君の両親が家の前で写ってる...もっとも、これが家と言えるかどうか!君の母親は少し減量したほうがよくないか?」
私は眉をひそめた。私は、3人に声をかけてドラコやハリー達が見えるところまで向かうことにする。
「向こうへ行け、マルフォイ。ロン、行こう...」
「そうだ、ポッター、君は夏休みにこの連中のところに泊まったそうだね?それじゃ、教えてくれ。ロンの母親は、ほんとにこんなに太ってるのかい?それとも、単に写真写りのせいなのかな?」
ドラコが嘲笑う。
「マルフォイ、君の母親はどうなんだ?その言い回しで言うんなら君の母親は、鼻の下に糞でもぶら下げているって言えるんじゃないのかな?いつもあんな顔してるのかい?それとも単に君がぶら下がっていたのかな?」
ハリーが言い返した。
「僕の母上を侮辱するな、ポッター」
「それなら、その減らず口を閉じておくんだな」
バーンという音が響き、数人が悲鳴をあげた。さらにもう一度バーンという音がなり、吼え声が玄関ホールに響き渡った。
「若造、そんなことをするな!」
私がやっと見えるところについたときには、ムーディ先生が、大理石の階段をコツッ、コツッと降りて来るところだった。ムーディ先生は杖を上げ、真っ直ぐに純白のケナガイタチ(フェレット)に突き付けている。
私はドラコの姿が見えないことと、前世の記憶を思い出して、震えている白ケナガイタチはドラコだろうと推測した。玄関ホールには、恐怖の沈黙が流れる。ムーディ先生以外は、身動き一つしない。
「やられたかね?」
ムーデイ先生が唸るように言った。低い、押し殺したような声だ。
「いいえ。外れました」
ハリーが答える。
「触るな!」
「触るなって何に?」
叫んだムーディ先生。ハリーが面食らったように聞き返す。
「おまえではない......あいつだ!」
ムーディ先生は、親指で背後に居たクラッブを指し示し、唸った。白ケナガイタチを拾い上げようとしていたクラッブは、その場で凍りつく。
ムーディ先生の動く目は、どうやら魔力を持っていて、自分の背後が見えるようだ。ムーディ先生は、クラッブ、ゴイル、ケナガイタチのほうに向かって、足をひきずりながらまたコツッコツッと歩き出した。