第85章 マッド・アイ・ムーディ
いつもの調子とは打って変わって、まるでミネルバかと思えるようなきっぱりとした言い方だった。
「行こう〜」
エイミーに頷いて、階段を降り夕食のために大広間に向かう。
「週末いっぱいかかるよ、きっと〜」
「宿題がたくさん出たの?」
『あら、クレアにミア!』
エイミーの呟きに質問した声に振り向くと、クレアとミアの二人がいた。
「ベクトル先生、なんにも宿題出さなかったの」
ミアがそう言う。
「そうなんだ〜いいな〜」
玄関ホールに着くと、夕食を待つ生徒で溢れ、行列が出来ていた。私達は、列の後ろに並んだ。
「君の父親が新聞に載ってるぞ、ウィーズリー!」
少しして玄関ホールに、そんな大声が聞こえてきた。
「マルフォイの声じゃない?」
「そうね。新聞って、日刊予言者新聞でしょう?」
クレアとミアがそう言葉を交わしている。
「聞けよ!魔法省、またも失態。特派員のリータ・スキーターによれば、魔法省の不祥事は、まだ終わってはいない模様である。クィディッチ・ワールドカップでの警備の不手際や、職員の魔女の失踪事件がいまだにあやふやになっていることで非難されてきた魔法省が、昨日、'マグル製品不正使用取締局'のアーノルド・ウィーズリーの失態で、またも機能不全の状態に陥った。名前さえ正確に書いてもらえないなんて、ウィーズリー、君の父親は完全に小者扱いみたいだねえ?」
玄関ホールの全員が、いまや耳を傾けていた。
「アーノルド・ウィーズリーは、2年前にも空飛ぶ自動車を所有していたことで責任を問われたが、昨日、非常に攻撃的なゴミバケツ数個をめぐって、マグルの法執行官('警察')と揉め事を起こした。ウィーズリー氏は、'マッド・アイ・ムーディ'の救助に駆けつけたのだった。年老いたマッド・アイは、往年の'闇祓い'であったが、友好的握手と殺人未遂行為との区別もつかなくなった時点で魔法省を引退していたのだが、警戒の厳重なムーディ氏の自宅に到着したウィーズリー氏は、案の定、ムーディー氏がまたしても間違い警報を発したことに気づいたのである。ウィーズリー氏は、やむなく何人かの記憶修正を行い、やっと警官の手を逃れたのだが、こんな不都合な場面に巻き込まれた不名誉なことに、なぜ魔法省が関与したのかという日刊予言者新聞の質問に対しては回答を拒んだ。写真まで載ってるぞ、ウィーズリー!」