第84章 三大魔法学校対校試合
「バカなことを。マダム・ポンフリーが鼻を元通りにくっ付けてくれたから良かったようなものの」
濡れた校庭の向こうから鐘の音が響いてきた。授業の終わりを告げる城の鐘だ。薬草学が終わり、ハッフルパフ生は石段を上がって変身術の授業へ。
グリフィンドール生は反対に芝生を下って、禁じられた森のはずれに建っているハグリッドの小屋へと向かう。ハグリッドは、片手を巨大なボアハウンド犬のファングの首輪に掛け、小屋の前に立っていた。
足下に木箱が数個、蓋を開けた状態で置かれている。近づくにつれて、奇妙なガラガラという音が聴こえてきた。時々小さな爆発音のような音もしているようだ。
「今回は、なにかしら?」
「なんだろうね〜」
クレアとエイミーが不安そうな顔をしている。
「おはよー!スリザリンの生徒を待ったほうがいい。あの子たちも、こいつを見逃したくはないだろう...'尻尾爆発スクリュート'だ!」
「もう一回言って?」
ロンの言葉に、ハグリッドは木箱の中を指差す。
「ギャーッ!」
ラベンダーが悲鳴をあげて飛び退いた。ギャーッの一言が、尻尾爆発スクリュートのすべてを表わしている。殻を剥かれた奇形のエビのような姿で、ひどく青白いヌメヌメした胴体からは、勝手気ままな箇所に脚が突き出し、頭らしい頭が見えない。
一箱におよそ百匹ほど入っていた。体長約六インチで、重なり合って這い廻り、闇雲に箱の内側にぶつかっている。腐った魚のような強烈な臭いを発していた。時々、尻尾らしいところから火花が飛び、パンと小さな音をあげて、そのたびに数インチほど前進している。
「いま孵ったばっかりだ。だから、おまえたちが自分で育てられるっちゅうわけだ!そいつを、ちっと実習にしようと思ってる!」
「それで、なぜ僕たちがそんなのを育てなきゃならないのでしょうかね?」
得意気なハグリッドに、冷たい声がそう言う。スリザリン生が到着していたみたいだ。声の主は、ドラコ。クラッブとゴイルが、ドラコの言葉を賞賛するようにクスクス笑っている。ハグリッドは答えに詰まってしまっているようだ。
「つまり、こいつらは何の役に立つのかな?なんの意味があるっていうんですかね?」
ドラコが問い詰める。ハグリッドは、口を開いたまま、必死で考えている様子。数秒間黙ったあとで、ハグリッドがぶっきらぼうに答えた。