第83章 ホグワーツ特急に乗って
「校長先生を呼びますよ!聞こえたでしょうね、ピーブズ...」
ミネルバが叫ぶ。ピーブズは、べーッと舌を出し、最後の水爆弾を宙に放り投げ、けたたましい高笑いを残して、大理石の階段の上へと消えてしまった。
「さあ、どんどんお進みなさい!さあ、大広間へ、急いで!」
ミネルバは、ビショ濡れ集団の私達に向かって厳しい口調で言う。私達は、すべって足元を取られながら玄関ホールを進み、右側の二重扉を通って大広間へと入った。大広間は、例年のように学年はじめの祝宴に備えて、見事な飾り付けが施されている。
「あー、暖かいわ」
ミアが呟いた。スリザリン、レイブンクロー、ハッフルパフの各テーブルを通り過ぎ、大広間の一番奥にあるテーブルで、他のグリフィンドール生と一緒に座る。ハリー達とは離れているため、私には声が聞こえてこない。ハリー達の隣には、ニックが座っている。
「闇の魔法に対する防衛術の新しい先生、いないわね?」
教職員テーブルを見て、クレアがそう言う。
『本当ね。後、いないのはハグリッドとマクゴナガル先生よね?』
「そうだと思う〜」
「ねぇ。天井、ひどい荒れ模様ね」
ミアが天井を指差す。天井は、魔法で本物の空と同じに見えるようになっているが、こんなにひどい荒れ模様の天井ははじめて見る。黒と紫の暗雲が渦巻き、外でまた雷鳴が響いたときには、天井に樹木の枝のような形の稲妻が走った。
「お腹ペコペコ〜まだかな〜」
『あんな天気だったんだもの。でもそろそろ来るんじゃないかしら?』
その言葉が終わるか終わらないうちに、大広間の扉が開き、一同が静かになる。ミネルバを先頭に、一列に並んだ1年生の長い列が大広間の奥へと進んで来た。私達もビショ濡れだが、1年生に比べたらまだましだろう。
湖をボートで渡って来たというより、泳いで来たかのようだ。教職員テーブルの前に整列して、在校生のほうを向いたときには、寒さと緊張とで、全員震えていた。しかしただ一人、一番小さい薄茶色の髪の毛の子が、厚手木綿のオーバーに包まれてる。あのオーバーはハグリッドのものだろう。
「ねぇ、あれハグリッドのものよね?どうしたのかしら?」
隣に座っているクレアがひそひそっと私に話しかけた。
『さぁ、なにかしらね?』
前世の記憶で覚えていなかった私は、首を傾げる。あの子はどうしたんだろう。